銀貨に現れるミルクスポット。特性、原因、向き合い方から消し方まで深堀

銀貨に現れるミルクスポットはご存知でしょうか。持たれている方も多いのではと思います。

 

下の写真が実際にミルクスポットが現れた銀貨になります。

 

これは、私が海外のショップで購入した英国2021年ブリタニア2ポンド銀貨になります。

 

特にこの一枚は様々な形や大きさが大胆に出ていました。

 一般的にミルクスポットが出ていることは毛嫌いされることが多いのですが、私はむしろ楽しんでいます。それは銀地金としての価値に影響がないことを前提とし、ミルクスポット出現のタイミングや大きさも形もバラバラ様々で個性があるからです。私はトーンやエラーコインみたいな感覚です。以下、ミルクスポットについて、特性や原因そして向き合い方など解説しました。

 

ミルクスポットとは、銀貨の表面に現れる白い曇りのことです。

 

銀貨の上にミルクをこぼして乾燥した後のように見えることからミルクスポットと呼ばれています。世界共通言語となっています。ミルクスポットは半透明で白く曇っており、大きさは様々で小さな斑点だったり、コインの広い範囲を覆う大きさまであります。

コレクターとして最も心配であるのは、購入時は完璧なコインだったのにある日突然ミルクスポットが現れることです。そしてミルクスポットは誰にでも起こり得る現象で避けようがないところが悩ましいところです。

 

造幣局から流通していない新品の銀貨を購入しカプセル等に入れ大事に保管すると思いますが、保管方法に関係なくミルクスポットは出る時は出ます。鋳造後、数日後、数週間後、数ヶ月後、さらには数年後それ以上に現れることもあります。

 

それでは、ミルクスポットの原因はどの時点にあるのでしょうか。

それは、鋳造のプロセスにあると考えられています。焼きなましと言いますが、銀貨に刻印する前、適した硬さにするために、洗浄と脱脂をしたのち加熱処理そして冷却の工程をとります。この洗浄時、銀貨の表面に残ったわずかな洗浄液の成分が熱処理により焼き付けられ、時間の経過とともにミルクスポットとして可視化され現れるのではと考えられています。

他説では、特定のプラスチック(PVCなど)との反応によって引き起こされる可能性があるともされていますが、これらによる反応は単に製造上の原因を前提とし出現を加速させるだけではとの意見が多いです。

ミルクスポットはその1枚1枚それぞれにあたかも決まった運命であるかのように現れます。

 ミルクスポットはどこの国の造幣局でも一般的で、英国のブリタニア銀貨に限らず、カナダのメープル銀貨、アメリカのイーグル銀貨、中国のパンダ銀貨、南アフリカのクルーガー銀貨など、そしてバーでも現れます。

 

ミルクスポットは銀貨の価値を下げてしまうのか? 

冒頭にも書きましたが、地金型銀貨はミルクスポット出現しようと銀地金としての価値に一切の影響はありません。すべてが白く曇っていようが、銀の価値に関係はなく、銀は銀です。その重さピッタリでその日の時価で売却が可能です。溶解の際もミルクスポットが出ていいようと関係なくまとめて鍋に一緒にポイです。

ただし注意が必要なのは記念として発行されるプルーフ銀貨の場合であり別問題です。コレクターはできる限り完璧なものを入手したいと望んでおり、ミルクスポットは傷の一つとみなすことが多いです。NGCやPCGSなどの鑑定会社でもミルクスポットにはそれぞれに基準を持っており、評価に影響します。先述しましたがコインがグレーディングされスラブに入った後にミルクスポットが出現する可能性もあります。

 

そもそもミルクスポットは防ぐことはできないのでしょうか。

残念ながら、私たちコレクターがミルクスポットを防ぐための既知の方法は先述の通りありません。良質のカプセルを使用し良い環境に保管しますが、ミルクスポット問題を解決できる手段となりません。

造幣局は為す術がないのでしょうか。

実は2018年にカナダで開始されたMINTSHIELDTM表面保護という技術によりミルクスポットの発生が大幅に減少しました。以前、カナダのメープル銀貨はミルクスポットが発生しやすいコインの1つでした。しかしカナダの造幣局ロイヤルカナディアンミントはミルクスポットの原因究明と根絶に多くを投資し、地元の大学の協力によって技術が革新しました。この技術の進歩により今後は多くが解決に向かうのではと期待されています。

 

皆様もうひとつの疑問があるのではないでしょうか?ミルクスポットを取り除く方法はあるのか???

結論、あります。

方法は簡単で、鉛筆の消しゴムを使用します。

新しい柔らかい消しゴムをご用意ください。

手順は簡単で、まずはコインに傷を付ける可能性がある砂や埃などの異物がないことを注意ください。あれば慎重に取り除きます。そして次は新品の消しゴムでミルクスポット部分をこすります。これだけでミルクスポットは消えます。しかし当然小さな傷は残ります。万一場合によっては非​​常に驚くべき良い結果になることもあるようです。余談ですが、指紋をとるための優れた方法でもあります。コインの表面が損傷するリスクはありますが、シルバーディップなどの化学薬品で全体にダメージを与えるよりは、これはダメージを最小限に抑えることができる方法です。

どの方法を選択する場合でも、特にプルーフや高価値の記念コインに使用すると事態が悪化する可能性が高いことは必ず念頭に置いてください。クリーニングすることは評価には常に有害であり否定的なものとなります。プロのコイン修復者でさえ、コインに一切の損傷を与えず劣化させることなく、ミルクスポットをうまく取り除くことを容易なことではありません。

 ご参考までに、こちら、私が実際に消しゴムでミルクスポットを消す作業をしている様子です。一般的に定番の柔らかい消しゴム「MONO」を使用。ミルクスポットは消えますが、こすった部分に消しゴムの跡が残りますのでその後拭き上げる必要があります。先述しましたが流通型であればいいですが、くれぐれもプルーフ銀貨にはおすすめできるものではありません。このような作業が好きな方はぜひチャレンジしてみてください。(この方法はおすすめするものでもなく、起こりえる事象において弊社は一切の責任は負いません。自己責任のもとチャレンジください。)

 

しかしながら、遅かれ早かれ、各国の造幣局はより良い品質管理を開発し、ミルクスポットの問題はなくなっていくと思います。そうしない造幣局は競争力を失い、人気は衰える一方となりますので。

別の視点から、ひとつ言えることは。ミルクスポットは、あなたが持っているシルバーが本物であることを証明してくれています。

 

そして、こんなことを考える方も少ないとは思いますが、

技術の進歩により銀貨からミルクスポットの出現がなくなる将来において、特徴あるミルクスポットが希少なコインとして取引される可能性があります。トーンやエラーコインと同じように。

「レアなミルクスポットの銀貨を持っていますか?」

「持っていますよ。これは、レアなゴシッククラウン。ヴィクトリアがピアスをしています。」

こんなオファーが飛び交う日常がきます。こんな楽しみ方はいかがでしょうか。