スイス・バーゼル発行、芸術性と歴史を兼ね備えた都市景観ターラー銀貨。
バジリスクと共に刻まれた「平和の祈り」が、激動の18世紀ヨーロッパを今に伝える。
1793年にスイスの都市国家バーゼルで発行された銀ターラー。
NGC AU58(鑑定番号 5961616-011)の高グレード品で、当時の鋭い打刻と美しいトーンを保った、極めて状態良好な逸品です。
表面には、精緻に描かれたバーゼル市の都市景観が広がり、下部に「1793」の年号、左右に植物の枝飾りが施されています。
裏面では、バーゼル市の守護獣バジリスクが右向きに立ち、左下には**市の紋章(盾)**が添えられています。周囲にはラテン語で
「DOMINE CONSERVA NOS IN PACE(主よ、我らを平和の中にお守りください)」
という敬虔な祈りが刻まれています。
バシリスクとは?
バジリスクは古代から伝わる伝説上の生物で、「王の中の蛇(basiliskos)」という意味のギリシャ語に由来します。見る者を石に変えると言われるその力は、恐れと神秘の象徴とされました。
バーゼルではこの名前の類似から、都市の守護獣としてバジリスクが市章やモニュメントに数多く使われてきました。このコインに描かれたバジリスクも、市民の信仰と自負心を象徴しています。
発行当時の1793年は、フランス革命の影響がヨーロッパ中に広がり、スイス諸邦も緊張状態にありました。
このターラーは、そうした混乱の中で「平和」と「神の加護」を祈るバーゼル市の願いを込めて鋳造されたものと考えられています。